Interview: INNIT (by courtesy of Eloquence)

※当インタビューは韓国のアート雑誌『Eloquence』に掲載されたものを、転載許可を得て前文と質問を翻訳したものになります。日本語の答えはアーティスト本人のものです。

久保雅之はエレクトロニック・ミュージシャンとそのファンを繋ぐ大阪のパーティー、INNITの主宰者だ。2010年に始まったこのイベントは厳格にBYOM (Bring Your Own Music)の精神を貫き、入場時にオリジナルのCDRを持ち込んだアーティストに対し、500円のディスカウントを実施している。主宰者たちはサブミッション・ブースに集められた音源を一晩かけて聴き、そこから選ばれたトラックをパーティーの最後に流している。

今のところこのコンセプトはうまくいっている。「ベッドルーム・プロデューサー」を対象にしたこのコンセプト。久保(自身もAnd Vice Versa名義でDJ活動/制作を行う)はINNITが経済的困難状態のパーティーから本格的に発動したミュージック・コミュニティに成長するところを目撃している。7回目のパーティーを企画する中、我々は久保に(パーティーの)プロモーション活動を後押ししたインスピレーション、政府のクラブに対する取締りが運営にどのような影響を与えたか、そしてINNIT世界デビューへの野望などについて伺った。

Interview: INNIT (by courtesy of Eloquence)
by Ben Landau
Translation by Satoru Teshima

INNITが始動する以前の大阪のエレクトロニック・ミュージックシーンを教えてください。

大阪は伝統的にノイズとかアバンギャルドのシーンがある。boredomsとかライブハウスで言えばベアーズとか。。だからエレクトロニックミュージックに限って言えば、ブレイクコアとかそういうのは、シーンとしてあったと思う。そういうアーティストも何人か知っている。

あとはinnitが丁度始まるくらい、関西のネットレーベル、Vol.4 recordsはブレイクコアを始めとして、テクノ、アシッドハウス、ドラムンベースなど色んな作品をリリースしていて、今でも活動している。余り詳しくはないけどミニマルテクノとかもっとDJ寄りなのも面白かったと思う。だけど僕らが好きなような音楽は、ベッドルームミュージックの要素も強かったから、余り居場所が無かったかもしれない。音楽が好きなDJはきっとそんなレコードもいっぱい持っているんだろうけど、踊りにくかったり、変則的過ぎてフロアでかけようとは思わなかったように思う。

大阪に限らず、全体の流れとしてエレクトロニカな要素が入っている折衷的な音楽がダブステップを始めとするベースミュージックと邂逅して行って、徐々に踊れる音楽にシフトしていき、クラブで聞きたくなる音楽になっていった、というのは、シーンの発展に繋がっていったと思う。

BYOMのコンセプトはどのようにして生まれたのですか?

実はBYOMは三つの意味があって、一つ目は周りに本当にかっこいいと思えるようなクリエイターは少なかったし、回を重ねる事に、どんどん輪が広がっていくような仕組みが必要だったこと。僕がそうであるようにもっと自分の音楽を聴いて欲しいと思うクリエイターは沢山いると確信していたしね。

二つ目は、コンセプトの中に僕がコントロールできない、人をワクワクさせる「変数」を入れる必要があると感じていたこと。パーティーでも会社でも作品でもなんでもそうだけど、僕は自分が生み出す全てのものは絶対に自分のキャパシティーとかクオリティを超えられないと思っていて、システム自体に自分自身を超えていける∞を組み込みたかった。

三つ目は、パーティーに遊びに来た人が必ずしも全ての出演者の音楽が好みではないし、退屈と感じた時になにかもう一つ楽しめる場所が必要だと思ったこと。その人にとって耐えられない音楽であれば、「早く終われー!」と叫びたくなるくらい、時間は地獄のように長く感じてしまうものだからね。

アイデア自体は、ロンドンのCDRというパーティー(事前に自作曲を集めて、それをDJが流すというパーティー。そこからフックアップされた人も多数)を踏襲しつつ、それを僕なりに膨らませたもので、タイトルもシンプルでストレートなものだ。

INNITのイベントがここまで大きく、ポピュラーになった事に驚いていますか?

驚いています。とはいえ、まだまだ十分ではないとは思っている。innitを通してもっといろんな事に挑戦していきたい。

今までBYOMのイベントを通して、将来が約束出来る新しい才能を発見しているようですが、それについてどう思いますか?

まずその「事実」を共有できてうれしい。すこしでもinnitがその才能あるクリエイターの手助けになれれば、と思う。いい音楽つくってるけどなかなか知られないクリエイターはやっぱりいるし、家で作って、ネットでアップしてってのも楽しいけど、ライブで直接聴いてもらえるというのも重要な経験だと思うから。BYOMに参加してくれたクリエイターは皆それぞれの感性を持っていて刺激をうけています。1回目は聴いてもあまりひっかからなかったけど、2回目に持ってきてくれたときに凄い進化しているな、と感じたこともあるし、面白いです。

INNITの名前の由来と意味を教えてください。

innitはロンドンのローカルスラングでisn’t itって言う意味だ。イベントの名前を決めるとき、確かもう一つ候補があったんだけど、今ではすっかり忘れてしまった。とにかく短い名前で親しみやすい感じにしたかった。
innitはロンドンに行ったら外国人はみんなおもしろがって良く使っていたよ。大阪の「何でやねん」くらい方言の代名詞的存在と感じていた。

ただ不思議なことにアメリカ人は in it と捉えるみたい。

INNITとDay Tripper Recordsの関係性を教えてください。

Day Tripper Recordsはいつも出演しているSeihoが去年に立ち上げたレーベルで、Seihoはもちろん、僕やinnitに出演しているメンバーが主にリリースしていて、そうじゃない人も勿論リリースしている。フィジカルリリースが基本で、CD,カセットテープ、レコードなんかをリリースしている。innitはイベントで、day tripperはレーベルなので、新しくリリースするアーティストにイベントに出演してもらったりして、お互いに相乗効果を狙ったり、逆にBYOMでピックアップした人をリリースしたりしてお互いにシーンを補完する関係だ。リリースについて相談を受けることもあれば、逆にイベントのことを相談することもある。

レーベルが始動して、innitも上手くいくようになったと思う。コミュニティを作るにはイベント、レーベルは絶対必要だと思う。もっと全体的な事をいうと、他にもidlemomentsというinnitよりもう少し音響的なイベントを友達がやっていて、実際にはレーベルを中心にお互いにジャンルの違う、二つのコミュニティが支えているという感じです。

本質的に「音楽コミュニティー」と呼ばれるものを、跡形も無い所から作り出すのは非常に大変だと思います。プロモーター、そしてイベント・オーガナイザーとして今まで一番大変だったこと、挑戦的だったことを教えてください。

まさか自分がこの月並みな言葉を言うとは思わなかったけれど、「続けること」だと思う。
正直言って立ち上げて半年間はお客さんもそんなにいなかった。赤字になったこともある。だから自分のやっていることや音楽を信じて、めげずに続けることが一番の挑戦なのかもしれない。あとinnitでは基本的にに音楽以外の要素を排除している。イベントにはアートの展示もないし、グラフィックペイントもない。本当に音楽だけ聞けるような時間にしたいからね。

政府のクラブハウスに対する最近の厳しい取り締まりが、イベントのオーガナイズの仕方になにか影響を与えましたか?

2回目のinnitを開催する丁度1週間くらい前に大阪のクラブシーンに衝撃を与えるような取締りがあって、やむなく深夜から夕方開催になってしまった。その判断は非常に難しかった。そして6回目の開催では、予定していたクラブに警察が入り、そのまま閉店してしまったよ。開催までにまだ3ヶ月くらいあったからなんとか他のクラブを借りれたけれど。だから実務的なオーガナイズという意味では、非常に影響を受けている。ただ音楽的には、そこまで深夜的な音楽ではないし、影響を受けているとは思わないかな。夕方にやるのは最初は少し抵抗があったけど、今ではそれが普通みたいになっている。クラブシーン全体で署名活動したり、取締りを見直すような活動もしている。

あなた自身もクリエイターとして活動していますね。あなたをDJとして駆り立てたものはもともと何だったのですか?

10代の頃、日本のミュージシャン、中村一義とアメリカのBeckを聴いて音楽を作り始めた。二人ともメロディがきれいだけど、それだけで無く、アイデアが聞こえてくるというか、「箱庭」感を感じて、僕もそういうのを作りたいと思った。だから一番のモチベーションはおもしろい音楽を聴いたときの「ワクワク」です。聞いたことのないような斬新な音楽を発見した時はうれしいし、僕も作りたいと思う。

音楽活動以外に何をして楽しみますか?

強いていうなら、料理が好き。一人暮らしの代表的な料理である、パスタとチャーハンを極めたい。
あと、たまにゲームもやる。FFのようなRPGが好きです。

15歳のKUBO MASAUKIにアドバイスをしてあげられるとしたら、どんなことを伝えますか?

コンプレッサーとベロシティを使いましょう!

大阪人は他の地方の日本人と比べて、ファニーで、言動がはっきりしていて、ちょっぴりラフな所があることが知られていますね。(もし何かあれば、ですが)大阪のクリエイターたちは、他の地方のクリエイターとどこが違うと思いますか?

関係でいえば、ジャンルに限らず、刺激を受けあって、みんな仲良しだと思う。規模的にも、東京ほど沢山いるわけではないし、他の地方ほど少なくも無い。本当にいいバランスだと思う。住んでいる地域で違いというのは、特に余り感じないかな、、、僕達は土着的な音楽をやっているわけではないしね。ただお客さんは東京とは違うというのはよく聴くし、感じる。イベントにもよるけど、東京はじっと聞いてる感じで大阪は、それに比べてラフでみんなガヤガヤしてる感じはするかな。

あなたがよく行く、地元のたまり場を教えてください。大阪のアートシーンが生まれる中心部みたいなところはあるのでしょうか。

たまり場は特にはないかな。強いていうなら、twitter、facebookでしょうか。
今の時代、フィジカルな意味で、レコード屋など、特定の場所だけがアイコンになることはないと思っています。ソーシャルメディアでもまだ十分とはいえませんが、役割を果たせてると思います。

イベントなどの1日限りのお祭りは別ですが。

INNITの次の予定を教えてください。大阪以外の場所での開催は考えているのでしょうか。

今年の12月にLAのアーティストのツアーをプロモートして、大阪でやるつもりです。来年の初めには日本国内を始めとして、北海道などいろんなとこでやるつもりだ。韓国でも是非やりたい。韓国のinnitでのBYOMで見つけた人を、日本に呼んだり、あるいは日本のBYOMで見つかったひとを今度はシンガポールで一緒にやったり、そうやってもっとローカルからグローバルまで常に刺激を受けていけるような事が出来るといいな、と思う。

もし他に付け足したい事があれば、教えてください。

あなたの周りにいい音楽作っている人がいたら教えてください!

リンク:
Innit
Day Tripper Records
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