Interview: LANKS

ivanhoe shot 1オーストラリアはメルボルンを拠点に活動するマルチ・インストゥルメンタリストでありシンガーソングライターLANKSが通算3枚目のEPとなる『Viet Rose EP』をリリース。共同プロデューサーとしてChet FakerOscar key Sungなどの仕事で知られるメルボルンの音楽シーンにおいて裏ボス的存在感を放つ敏腕プロデューサーAndrei Ereminを迎えた今作。先行シングル”Golden Age”, “Holla”のカラフルで情緒あふれたポップから、Vaporwaveの領域にまで近づいた”Sometimes”,そしてRadioheadのバラードのような寂寥感をもつ”Kyneton”まで、今までのLANKSの集大成ともいうべき傑作に仕上がっています。

レーベルも、ハイプも、多大な制作費も無しに、自分だけの力でここまで上り詰めたLANKS。彼が一体何者なのか、音楽に対してどのような感情を抱いているのか、そしてクリエイティビティとの戦い方など、興味深い話をたくさん伺うことができました。

Interview: LANKS
By Satoru ‘Teshi’ Teshima, October 16, 2016

LANKSは何者?
LANKSは僕のこと。アーティストとしての人格であり、旅の一環。僕の本当の名前を知らない人も多いよ。そのほうが僕っていう感じがする。実生活ではバランスのとれた生き方を目してるけど、LANKSでは深く思想や感情について探求しようとしている。

どんな曲があなたのパーソナリティーを反映していますか?
自分の曲であれば”Holla”が僕という人間を一番表現している思う。エモーショナルでイキが良く、あらゆるレイヤー、セクション、アイディアがごっちゃ混ぜになって、一つの面白いカオスを生み出しているんだ。僕はそういう感じってことかな。他の人の曲であれば、もしかしたらRadioheadの『アムニージアック』に収録の”You And Whose Army?”がベストかもしれない。当たり前の事を疑問に思ったり、それをぶち壊そうとするのが好きなんだ。この曲はそんなメッセージをほんのり刻んでる気がする。

子供の頃から音楽好きだったのですか?
姉と僕は子供の時からずっと一緒に音楽を学んできた。彼女はトロンボーンとキーボードを、僕はギターとフルートを。ずっと音楽を一緒にやってきたし、Victorian College of Arts (美大)でジャズも勉強したんだ。音楽一家でね、いつもいっしょにジャムセッションを行ったり、何よりも音楽の楽しくてクリエイティブな面を経験しながら育った。僕の従兄弟もミュージシャンで、Ry X (The Acid, Howlingも)という名前で活躍してるよ。

初めてオンラインに自分の音楽をアップした時は何歳だったか覚えていますか?どんなサウンドでしたか?
いつも何かを作っていたから、楽器を手にした瞬間からすぐに曲を作り始めたよ。12歳の時に初めて書いた曲をどうやって演奏するか、まだ完璧に覚えてる。それが初めてアップした曲かは覚えてないけれど、10代の頃はたくさんの曲をMyspaceにあげてた。Soundcloudのいろんなアカウントにランダムにあげた曲やアイディアはおそらく100曲くらいある。

東京からはメルボルンの音楽シーンのことはよく分かりません。メルボルンのミュージックシーンやコミュニティについて教えてくれますか?
ここのミュージックシーンは素晴らしいよ!サポートしてくれる人も多いし、クリエイティブでタレントに溢れた人たちはみんな一生懸命制作に努めていて、一緒に成長している感じなんだ。Kllo, Hayden Calnin, Woodes, Big Scary, Andrei Ereminなんかをチェックしてみて!いま、メルボルンのクリエイティブなミュージックシーンが世界中で広がっているのを感じてる。これからどんどん面白くなるはずだよ。

ホームスタジオがあるとお聞きしました。セットアップ内容を教えてください。
ピアノにギター、フルート、マイク、そしてラップトップ。かなりミニマルなセッティングにしてる。もっと色々足したいんだけど、自分に制限を与えて制作するのも好きだから。プラグインはひとつだけ。同じセットアップで3つのEPを作ったんだけど、かなり楽しかったよ。少ないセットアップでどれだけクリエイティブになれるかってチャレンジがあったから。今回はAndrei Ereminがプロデュース、ミックスとマスタリングを手助けしてくれて、曲の魅力をさらに引き出してくれた。

どれくらいの頻度で作曲をしているのですか?
なるべく毎日を心がけている。ツアー中は少ししか時間がさけないけど、なるべく何か作るようにはしているんだ。道中は手こずることが多いんだけど、だらけてても何も生まれない。心をオープンに、前を見据えて、自分を問い詰めるメソッドが、作曲の上で今の所一番プロダクティブ。

アイディアがまったく思い浮かばなかったり、やりたいことが多すぎたりすると、制作において行き詰ることがあると思います。どのようにして壁をぶち破りますか?
クリエイティビティも作曲も、どれも問題を解決していくことから始まる。同じところに立っていては、どんどん深みにはまっていくだけで、何も変わらない。もっと心をオープンにして再び立ち向かうことで、僕の制作へのアプローチもよりよいモノになってきたと思う。何時間も時間をかけることは問題じゃないよ。思いついたアイディアがうまくフィットしなくても大丈夫。自分が本当にいいと思うものに行き着くには時間を要するものだし、だからもっともっと時間をかけて追求していけばいい。

困難にぶちあたったら、散歩にでも出ればいいし、別の楽器を使って書いてみるのもいい。偶然性を使ってみるのも(メモにアイディアをいっぱい書いて、帽子からそれを引いてみるとか)、ギターの弦を一本しか使わないとか、ピアノで指2本しか使わないとか色々方法はあるはず。脳が当たり前だと思っている自然なパターンを壊す。自然体から抜け出すことで、無限の可能性が広がる。

あなたの音楽は生音とプログラミングされたサウンドが程よいバランスでミックスされています。サウンドに重点を置いて考えた時、作曲にどのように取り組んでいますか?
周りにあるもので音を作り出し、サウンドのパレットを仕上げていく。いまピアノが特に気に入っているけど、ギターとピアノは子供の時からずっと弾いているから、この三つで実験することが多いかな。自分にとって普通でない音を立てるのが好きなんだ。それが僕が追い求めているサウンドで、僕をエキサイティングな気持ちにさせてくれる。コンピューターを使った作曲はまるで織物をしているようで、多くの時間が必要。ものづくりのプロセスって楽しいよね。

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あなたの祖母が最近のリリースでアートワークを担当しているようですね。このコラボレーションはどのように始まったのですか?
おばあちゃんは素晴らしいビジュアルアーティストで、妹の21歳の誕生日のタトゥーをデザインしたんだよ。心の中でいつも彼女とコラボレーションをしてみたいと思っていた。今年までは僕のルームメートで親友のWill Devereuxが、作品のアートワークとデザインワークを担当してくれていたんだけど、もし彼とおばあちゃんを合わせた面白いなと。彼がまるでミクシングエンジニアのように彼女のイラストにちょっとずつ手を加えていった。ずっとおばあちゃんの作品の大ファンだったし、この経験をシェアすることができて本当に嬉しい。僕のアーティストとしての人生がどうなっても、友達や家族とのコラボレーションはずっと大事にしていきたいし、やっぱり素敵な人々との仕事は楽しいものだから。

新作EPのタイトル『Viet Rose』に込められた意味を教えてください。
Viet Roseはメルボルンにある僕のお気に入りのラクサレストラン。実はそこのすぐ近くに住んでいて、僕の過去の人生をずっと見てきた存在なんだ。$10のベジタリアンラクサが僕を生き長らえさせてくれた。僕は100%インディペンデントなアーティストだからチャレンジも多い。ここ2年でEPを3枚仕上げ、多くのサポートツアーも行った。でも究極的に、それは本当に自分がやりたい音楽をリリースできるということで、その経験からいろいろなことを学ぶことができた。もし今レーベルから何か音楽をリリースすることになっても、その理由がすぐにわかるし、先に学んでおいで全く損はないことなんだ。

Facebook, Snapchat, Instagram, TwitterとSNSを活用してますね。ファンとの関係づくりにどれくらい役立っていますか?
とっても!僕はファンと友達になるようにしているんだ。ソーシャルメディアを通じて連絡を取り合うことができるし、人生を共有できる。ソーシャルメディアにも欠点はある。でも利点のほうが多い。ファン層をコントロールする「仲介者」を取り除いてくれるしね。じゃあ自分一人になったときどうすればいいか。音楽で人とつながるように、ファンと関係性を築き上げることができるかが、チャレンジなんだ。その点で、インターネットは僕たちに力を与えてくれたと思う。

テクノロジーの黄金時代に生きる私たち。まるで全てが手の届くところにあるような、そんな世界です。人々の音楽への取り組み方はどのように変わったと思いますか?
テクノロジーが物事を変えることに対して、僕はシニカルな気持ちでいる。人間の本質は変わってないと思うよ。テクノロジーの進歩の前に、僕らは感情を持った生き物だってこと。テクノロジーがもたらしたのは、みんながベッドルームで曲を完成させられるようになったこと。しかも自分の裁量で、静かな場所で自分たちのスキルを磨くことができる。特に注目を浴びる前に、まだ充分に自信が無くて、いろいろ試したいときとか。コンピューターが現れる前にも、昔から人々は家で音楽を作っていた。一番大きな違いは様々なチャンネル(ソーシャルメディア、サウンドクラウド、インターネット)が、音楽好きやリスナーへのリーチを助けてくれること。しかも世界のどこからでも。

自分の人生を映画タイトルに比較してみてください。
「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」ー僕の本当の名前はウィルといって、常に新しい情報や知識を追い求めてる。新しい経験に心を惹かれるし、新しいモノにはいつだって飛びつく。自分のことを天才だなんて思ってないけど、一生懸命に何かを取り組み、追求し、我慢強くあることが大事だと思うんだ。

最後に、冷蔵庫にペンギンがいたらどうしますか?
ずっと抱きしめ続ける。

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LANKSの『Viet Rose EP』はただいま発売中。日本からはiTunesBandcampで購入することができます。

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watch: Deptford Goth “Union”

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南ロンドンのプロデューサ/シンガーソングライター、Daniel Woolhouseによるプロジェクト、Deptford Goth。同郷のブロリンなど、柔らかいサウンドと、ゆったりとしたビートが特徴で、歌詞のイジイジっぷりもなかなか。来年の頭にMerok Recordsからリリースされるデビューアルバムからのトラックです。

“I belong with everyone/everyone I’ve ever known/is here with me”

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watch: Holly Herndon 『Movement』

アヴァンギャルド/エクスペリメンタル・エレクトロニックプロデューサー、Holly Herndonの新ビデオ”Movementが公開されてます。デビュー作『Movement』から。監督はMat Dryhurstです。

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listen: Nicolas Jaar/Theatre Roosevelt 『The Ego』

ブラック・フライデーって知ってます?感謝祭(11月の第4木曜日)の次の日の金曜日のことです。クリスマス商戦がこの日から始まり、小売業者が黒字になるということでブラックフライデーと呼ばれているようです(Wikipediaの知識ですが)。

アンビエント・プロデューサーNicolas Jaarがそんな消費社会に対するメッセージを込めた新曲”The Ego”を自身のサウンドクラウド上に『フリー』でアップしてます。

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