Live Report: Weyes Blood at Kantine am Berghain

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ベルリンの4月。友達から4月は雨が多く、まだまだ寒い日が続くと聞いていたのですが、20℃を超える初夏日和の日もあったり、非常に過ごしやすいです。ベルリンは冬が長いので、ここに住む人たちは、ほぼ100%が太陽信者になります。公園に行けば上半身裸で踊ったり、日光浴をする人がいるし、カフェやレストランは店の前に席を出し、アイスクリーム屋には行列が。ただ夜はまだ寒いので、ジャケットは必須です。

さて、Sharon Van Ettenに続き、今回はWeyes Bloodのライブレポをお届けします。Weyes BloodはAriel PinkやPerfume Geniusのコラボでも、美しい歌声を聞かせるマルチ・インストゥルメンタリスト、ナタリー・メーリングによるソロプロジェクトです。新作「Titanic Rising」では本人が「Bob Seger meets Enya」と形容するように、Beach Boysを彷彿とさせるクラシックなポップと彼女独特の「アンビエンス(揺らぎ)」が同居する、真新しい音世界を展開。Lana Del Reyから絶賛されたプログレアンビエントポップ “Movies”や、B級スプラッター映画にインスパイアされたMVも愉快な”Everyday”、Father John Mistyとの共通性を感じるストーリーテリング”Wild Time”など、2019年を代表するシンガーソングライターアルバムとして今後も評価され続けるであろう傑作です。

今回のライブは世界一のテクノクラブ(そして入りにくさも世界一レベル)「Berghain」の脇に設置されたライブ会場 Kantine am Berghainで行われました。キャパは200人。Berghainのダークなギラギラ感を全く感じさせない、アットホームな雰囲気のところ。開場20:00、オープニングアクトが21:00、本編が22:00開始と、遅めのスタート。外にはたくさんのテーブルやベンチ、ブランコが設置され、ライブが始まるまでみんなのんびりビールを飲んでいましたよ。

オープニングアクトはDiscovery Zoneという、シーパンク + Grimesなソロアクト。下のビデオをみていただければ雰囲気が一発でわかると思います。チープな電子ドラムと、シンセ音と溶け合うシルキーな歌声が気持ちよかったです。初期のNite Jewelっぽい。ライブが終わると「物販では何も売ってないけど、お気に入りの石を集めたから、みんな持って帰ってね」と電波な発言をしておりました。

さてWeyes Bloodです。ギター、ドラム、キーボード、ベーシストを連れた5人のバンド体制。Weyes Bloodは背中に美しい刺繍が入った、真っ白なスーツに身をまとい登場。かっこいい。一曲目は新作「Titanic Rising」のオープニングを飾る、ゴージャスな”A Lot’s Gonna Change”。弾き語りで静かに始まり、ドラム隊が加わり、徐々に熱を帯びていきます。彼女のシネマティックなソングライティングは続く”Something to Believe”にも顕著で、カレン・カーペンターと比較される伸びやかな歌声がとても美しい。簡単な挨拶の後(「クラブの前の休憩で寄ってくれたのね?嬉しい。」)、今回のライブのハイライトのひとつ”Everyday”を披露。楽しく跳ねるリズムとキュートなメロディ、プログレな曲展開にライブならではの肉体性と空気感が加わり、レコーディングとは別次元のカタルシスを生んでいました。

ジョージ・ハリソン meets カーペンターズなナンバー、”Andromeda”、前作から”Seven Words”、アナログシンセ音がリードするドリーミーなバラード”Mirror Forever”、そして”Picture Me Better”をプレイした後、個人的にとても楽しみだった”Movies”のイントロ音が!「この照明、海の中にいるみたいじゃない?じゃあ私も…。」と、イントロと共に巫女のような踊りを披露。最後はジャケットを脱ぎ捨てていました。どこまでも優美なサウンドで、まさしく音に浸かる感覚を覚えました。この一曲だけでも観に行けてよかった。

極上のソングライティングが味わえる”Wild Time”の後はなんとBeach Boysの”God Only Knows”をカバー。「聞きたいことがあるんだけど、この中で神様を信じてる人どれだけいる?手を挙げてみて?あら、全然いないのね。じゃあ”God”を”Good”にしてやろうかな。え?やめたほうがいい?じゃあ”God”のままで。」と、一人ボケツッコミまでこなしてました。かわいい。バンドを紹介し、最後は前作”Front Row Seat to Earth”から”Do You Need My Love”を披露。とびきりキャッチーなコーラスと、サイケデリックなスペースロックがオーバーラップする彼女の代表曲です。

アンコールでは”YOLO, Why?”と流行り言葉を皮肉として使った歌詞で話題を呼んだシングル”Generation Why”と、デビューアルバムから”Bad Magic”を弾き語り、ライブは終了。まるで一つの映画や演劇を観た後のような後味で、とても満足しました。彼女のトークも切れ味がよく、クールで面白く、機会があればもう一回観たいなあ。

次のライブはFKA Twigsです。

セットリスト

  1. A Lot’s Gonna Change
  2. Something to Believe
  3. Everyday
  4. Andromeda
  5. Seven Words
  6. Mirror Forever
  7. Picture Me Better
  8. Movies
  9. Wild Time
  10. God Only Knows (The Beach Boys cover)
  11. Do You Need My Love

    Encore:

  12. Generation Why
  13. Bad Magic

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Live Report: Sharon Van Etten at Hamburg

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先週土曜日、ハンブルグまでSharon Van Ettenのライブを観に行きました。ベルリンからFlixbusに乗って2時間半強。道中は見わたすかぎりの草原で、放し飼いされた馬が時々道路の方をうかがっておりました。

今回の会場はハンブルグのレッドライト地区(いわゆる飾り窓)と言われているReeperbahnの近く、Gruenspan。19:00から開場で、前座をはさみ、Sharonは20:15からやってたかな。土曜日にしては早めのギグなので驚きました。売り切れと聞いていたので、きっとすし詰なんだろうなと思ってましたが、どうもそうならないように会場側がチケットの数を考慮しているようで、混み具合はあんまり気になりませんでした。とにかく暑かったけども。会場はこんな感じ。

IMG_3278前座はThe Golden Filterという、アメリカ人男子、オーストラリア人女子のエレクトロポップデュオ。The Knifeの歪んだポップ性を70年代のジャーマンエレクトロで再解釈したような、ノワール感溢れるダークポップに仕上がってました。ボーカルの子のぎこちないダンスも愛らしかった。

さて本番、Sharon Van Ettenです。Portisheadの曲と共に登場。『Remind Me Tomorrow』の中でもアンニュイな”Jupiter 4″でオープン。アメリカの音楽番組に出演した時の歌声が、音源と比べてかなり荒々しく、コンディションを勝手に心配していたのですが、まったくの杞憂でした。”Jupiter 4″に続き、先行シングルの”Comeback Kid”で会場をヒートアップ。イントロから大きな歓声。シングアロングはなかったけど、早くも観客の心を一体に。

Depeche Mode風エレポップ、”No One’s Easy to Love”をはさみ、ギターをかかえ2ndアルバムからの名曲”One Day”、ロマンチックな”Tarifa”でタイトなバンド演奏を披露。続くトリップホップの匂いを醸し出す”Memorial Day”では、ほぼスキャットに近い、むせび泣くような高音メロディを見事に歌い上げていました。ベス・ギボンズが乗り移ってるんじゃないか? ランダムにチャイムをかき鳴らす様は本当に何かが取り憑いているようでした。

“Your Shadow”で会場を再び温め、今回のライブセットの個人的ハイライト”Hands”です。もともと90年代オルタナティブロックを感じさせる曲だったけど、まさかライブになるとここまで化けるとは。イントロからサビへ、迫りくる轟音の嵐。これはもう、グランジ!実際に音に合わせて、ヘドバンしてる人もいました。Sharon Van Ettenのライブでこれは予想してなかった。正直、度肝抜かれました。演奏後バンドメンバーはSharonを残して退場。「息子と、本当の自分を隠さずに生きるあなたたちに送ります」と、Sinéad O’Connorのカバー”Blackboys on Mopeds”をエレクトロピアノの弾き語りで披露。

「イギリスは警察が原付に乗った黒人の男の子を殺すような場所だ/だから私はここを去る/息子にはそんな深い悲しみがあることを知ってほしくない」

衝撃的なカバーのあと、ライブは一気にクライマックスへ向かいます。まずは新作アルバムから”Seventeen”。Sharon Van Etten流ブルース・スプリングスティーンなナンバーです。途中声を荒げてシャウトするところがあるのですが、ライブだと凄みが20倍増し。顔を真っ赤にし叫ぶ彼女のノコギリのようなビブラートシャウト。ちょっと怖かった。続いて4thのシングル”Everytime the Sun Comes Up”、最新アルバムの最後を飾るスローな”Stay”でセンチメンタルに締め。

アンコールの一曲目は”I Told You Everything”。続いてグランジ域に再突入の人気曲”Serpents”を演奏後は、Bon Iverとのライブ共演や数々のカバーで、Sharon Van Ettenのディスコグラフィーの中でも知る人ぞ知る大名曲”Love More”で終了。天国を思わせる真っ白な照明に照らされて歌う彼女が、僕には天使に見えました。マジで行ってよかった…。

さて、次のライブはWeyes Bloodです。

当日のセットリストはこちら。

1. Jupiter 4
2. Comeback Kid
3. No One’s Easy to Love
4. One Day
5. Tarifa
6. Memorial Day
7. You Shadow
8. Malibu
9. Hands
10. Black Boys on Mopeds (Sinéad O’Connor cover)
11. Seventeen
12. Every Time The Sun Comes Up
13. Stay

Encore:
14. I Told You Everything
15. Serpents
16. Love More

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Live Report: Predawn

Photo Credit: Takanori Kuroda

Live Report: Predawn
By 黒田 隆憲, April 29, 2014

シンガー・ソングライター清水美和子のソロ・プロジェクト、Predawnがプラネタリウムを会場にして、東京と大阪の2カ所でライヴをおこなった。のべ3公演はどれもソールドアウトになるほど盛況で、改めて彼女の人気の高さを実感。幸運にも筆者は、東京(北とぴあ “スペースゆう” プラネタリウム)の初日、大阪(ムーブ21 プラネタリウム)と2回鑑賞する機会を得ることが出来た。

東京会場は、半円形ドームのフロア一角にカーペットが敷かれ、その傍らにはグランドピアノと2本のアコギ、それからライトスタンドが並べられている。まるで自宅のリヴィングに通されたような、いつものライヴハウスとは全く違った雰囲気。プラネタリウムということもあって、リクライニング式の椅子はゆったりとしてて座り心地も抜群だ。ほどなくして照明が落ちると、いつものように清水が登場。アコギを抱えてライヴがスタートした。前半はNYの街並みや、どこかの植物園で写したと思しき写真がドームの壁に大きく投影される。少々画像が粗かったのは残念だったが、中盤からはいよいよプラネタリウムの出番だ。譜面などを照らすため、清水の手元のライトがほんのり灯っている以外、辺りは真っ暗闇となり、天上をあおぐと投影機によって映し出された星々が、静かにまたたいている。すると、先ほどまで聴いていたPredawnの楽曲たちが、全く違う響きとなっていることに気づいた。例えば、部屋の灯りを真っ暗にして音楽を聴いたことがある人なら、この感覚を分かってもらえるはず。視覚を遮られたことによって聴覚が敏感になり、清水の歌声や息づかい、アコギを爪弾くニュアンス、メロディの豊かさが、まるで細胞の隅々にまでダイレクトに染み渡っていくように感じられたのだ。

あれからおよそひと月後、再びあの感覚を確かめるため大阪へ。グランドピアノこそなかったものの、カーペットが敷かれた小さなステージには、アコギ2本とキーボードが並んでいた。今回は写真のスライドはなく、1曲目の「Over The Rainbow」が終わるとすぐに暗転し、星々がまたたく中で「Lullbay From Street Lights」が演奏される。星の数もおそらく東京より多く、じっと見つめていると、本当に降り出してくるんじゃないかという気さえしてきた。後半は東京と同様にRayonsこと中井雅子も登場し、ジャジーにアレンジされた「Milky Way」が演奏されると天上には大きな天の川が。清水がビョークばりのヴォーカルを聴かせるRayons作の「Waxing Moon」では満月がぽっかりと浮かび、無数の流れ星がヒュンヒュンと飛び交うなど心憎い演出も随所にしのばせている。

Rayonsとの共演では見どころの1つ、まるでコリーヌ・レイ・ベイリーとハーヴィー・ハンコック共演を彷彿とさせる「Blackbird」のカヴァーも、相変わらず絶品。アンコールではさらに、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』の主題歌「I See The Light」を、アコギ1本でドリーミーにカヴァーしていた。楽曲のクオリティの高さには、いつもながらため息の連続。「Tunnel Light」や「Keep Silence」「Sheep & Tear」など最新アルバム『A Golden Wheel』に収録された曲は、すでに様々な楽器が重ねられたアレンジに慣れ親しんでいるはずなのに、こうして久しぶりにアコギ1本で聴いても物足りないどころか、まだまだ新たな発見があって驚くばかりだ。新曲もいつの間にか増えていて、とりわけジュディ・シルを彷彿とさせる「Don’t Break My Heart」は、Predawnの新たな代表曲となる可能性大。早くも次のアルバムが待ち遠しくなってきた。

清水はMCで、「プラネタリウムと夢は似ている」と話していた。「どちらも“ニセ物”なのだけれども、それは現実にあったことや、実在する(していた)ものを投影(反映)している」と。聴き手の感情を引っ張りだすような彼女の歌を聴きつつ、書き割りの夜空を見上げていると、確かにそこでまたたく星々は自分の“喜び”や“哀しみ”の投影なのではないかという気さえしてくる。夢の中で、自分の感情全てに包まれているような、優しくも切なく、そして懐かしい気持ち……。それはきっと、本物の夜空の下では味わえないものなのだろうし、夢と現実、生と死の“未明”を漂うようなPredawnの曲だからこそ、その感覚を心地良く感じられるのかも知れない。

Predawnほどプラネタリウムが似合うアーティストはなかなかいないと思う。この企画、是非これからも定期的に開催して欲しい。

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黒田氏が去年行ったPredawnのライブレポートはこちら

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Live Report: Predawn


Photo Credit: Takanori Kuroda

Live Report: Predawn
By 黒田 隆憲, July 28, 2013

今年3月に待望のファースト・フル・アルバム『A Golden Wheel』をリリースした、Predawnこと清水美和子のワンマン・ライヴが、6月30日に新代田FEVERにておこなわれた。チケットはかなり早い段階でソールドアウトとなり、会場には20代の男女を中心に幅広い世代のファンが駆けつけていた。開演時刻18時半を10分ほど過ぎた頃に客電が落ち、アルバム冒頭を飾る「JPS」のグロッケンシュピールが流れる中、ベースとドラムを引き連れ清水が登場する。これまでにも何度かバンド編成によるライヴを披露してきたPredawnだが、ライヴの1曲目から「弾き語りではない」というのは、おそらく初めてのことではないだろうか。「基本的にあまのじゃく」(「CINRA」インタビュー)を自称する彼女らしい、(早くも)こちらの期待を心地良く裏切る展開には思わずにやりとしてしまう。

アレンジも、あくまで「アコギとうた」を基軸としながらリズム隊がそっと支えるような、アルバムに準じた楽曲もあれば、エレキギター(フェンダー Telecaster)を抱えた清水がヘッドバンキングしながらリフやソロを弾きまくる、アグレッシヴな楽曲までヴァラエティに富んでいる。極めつけは前作『手のなかの鳥』収録の〈Apple Tree〉で、中期ビートルズばりに動き回るベースラインとハネたドラミングによって、全く別の曲に生まれ変わっていた。筆者はこれまで「清水美和子が1人で作り上げる世界観こそが、Predawnの真骨頂」と思い続けてきたが、今日のバンド・アレンジを聴いて「これは考えを改めるべきだな」と強く感じた次第である。

途中でサポートの2人が退場し、いつもの「アコギとうた」で数曲演奏した後、およそ10分間の休憩。BGMには、ちょうど10分近い長さの(正確には8分22秒の)、ビートルズ〈Revolution 9〉を流すという心憎い演出もあった。後半はRayonsこと中井雅子もピアノで登場し、チェロ奏者と3人で〈Blackbird〉(またしてもビートルズ!)のカヴァーからスタートする。これがまた素晴らしく、現代音楽とジャズとソウルをミックスしたようなアレンジに、終始鳥肌が立ちっ放しだった。他にも清水がヴォーカルで参加した Rayons作の名曲中の名曲〈Halfway〉(『After The Noise Is Gone』収録)や、ビョークばりのヴォーカルを聴かせる〈Waxing Moon〉(『Projection』)を披露。ベースとドラムが加わってのPredawnによるラグタイムなナンバー〈Custard Pie〉(『手のなかの鳥』収録)と、豪華な共演に酔いしれた。

もちろん、いつもの“美和子ワールド”も全開。トランペット・ソロは緊張し過ぎたのかグダグダだったり、「こんなチビのために、こんなに集まってもらって すみません」とか、「あの、終電ない人は遠慮なくお帰り下さい」とか相変わらずMCは自虐ネタ満載だったり、最初から最後まで“緊張と緩和”が入り乱れ、息をつく暇も(?)なかった。他にもベルギーのバンド、Marble Soundsと共作した〈Sky High〉や、アルバム未収録の新曲までたっぷり演奏。およそ2時間に及ぶステージは、これまでのPredawnの集大成であり、同時に次なる展開を予感させるものでもあった。彼女の更なる飛躍にも期待大だ。

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