「宇宙」と音楽
東京を拠点に活動するライター HEU がテーマを一つ選び、そのテーマにインスパイアされたアルバムを紹介するシリーズの第二弾!今回は「宇宙」を遊泳します。
宇宙への思いは音楽ジャンルを越え、長年音楽家にインスピレーションを与え続けてきました。コンピューターから生み出した「ビーッ」や「ププッ」といった音は、宇宙空間を音で伝えるためには、不可欠な要素でした。今回は美しい旋律のアンビエントから、フリージャズ、70年代のディスコまで、宇宙にまつわるアルバムを5つ紹介します。
Howie B & Húbert Nói
Music For Astronauts & Cosmonauts (2007)
まずは電子音の鼓動が心地よい、心を落ち着かせてくれるようなアンビエントアルバムからスタート。今作はスコットランドの音楽家・プロデューサー、ハウィー・ビーと、アイスランド出身のアーティスト・作曲家、ヒューバート・ノイによる共同制作になります。1998年から2002年にかけて制作された本作は、アイスランド人とカナダ人の血を引く宇宙飛行士、ビオニ・トゥリグベイソンが1997年の宇宙ミッションで体験した「宇宙で過ごした時間」にインスパイアされています。“Take Off”は宇宙船で地球の軌道(297 km)に到達する8分半を表し、“Morning”、“Day”, “Evening”、“Night”の曲の長さは、宇宙ステーションが地球を一周する時間を表現しています。
Sun Ra
Strange Celestial Road (1980)
米フリージャズの作曲家、ピアニスト、シンセサイザープレイヤーであるサン・ラは、音楽で「宇宙性」と「スピリチュアリティ」のテーマに取り組むことで有名です。彼の音楽界における神秘的なオーラは、舞台に登場するときのキラキラで派手な色の衣装と、舞台上での前衛的な演出により、さらに広がりました。アフロフューチャリズムのパイオニアとしても知られている彼のスタイルは、アフリカンジャズのルーツと、未来的なビジョンが混じり合っています。『Strange Celestial Road』はエレクトロニックの要素が入ったソウルジャズアルバム。三つの曲で構成され、“I'll Wait for You”は柔らかくグルーヴィな音に、背景から微かなシンセサイザーが重なり、次第にフリージャズへと展開していきます。
John Keating
Space Experience (1972)
スコットランドの作曲家・ミュージシャンであるジョン・キーティングの『Space Experience』は、スペースエイジためのソウル、ファンクのジャズアルバムです。今作はE.M.S. Synthi VCS3で作成され、そのサウンドはまるでシンセサイザーによるオーケストラ。2曲目の“The Unknown Planet”では、細やかなコンピューターの音が形成され、さらに悲しみを含んだ“Prelude To Earthrise”へと展開し、背景にあるメロディーは左右のチャンネルを交差し、最終的に空間の中へ消えて行きます。
Space
Magic Fly (1977)
『Magic Fly』は私たちをスペースディスコの時代へ連れこみます。1977-1980年の間に活躍していたフランスのシンセポップユニット、スペースによるデビューアルバムとなる今作は、直ちに世界中でヒットし、ソウルとダンスの旋律、未来的な音楽ビデオと、サイケデリックなビジュアル、おおげさなスペースコスチュームで、私たちに未来を感じさせてくれました。中毒性が強目の最終トラック、“Carry On, Turn Me On”は必聴です。
Yann Tomita
Music for Astro Age (1992)
ヤン富田は電子音楽、ヒップホップ、アシッド・ジャズ、スティールパン、現代音楽など、多岐に渡る音楽背景を持つ音楽家です。2時間を超える二枚組作『Music for Astro Age』はヤンのファンキーな性格と、ユニークな世界観を味わうことができます。穏やかなムードとスペーシーかつエレクトロニックなリバーブ音を含んだジャズボーカルは、親しみやすいピアノ旋律へと変わり、曲の間の沈黙にもジョン・ケージの“4分33秒”をカバー。一時間を越えたあたりで、徐々にシンセサイザーの音が中心となり、ポップでダンサブルなサウンドが展開します。後半は再びダウンビートでアンビエントな曲調に復帰します。ヤンは現在でも自身の音楽リサーチ協会、オーディオ・サイエンス・ラボラトリーにて「音楽を通した意識の拡大」を提唱しています。
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