Lights and Music 20 Favorite Albums of 2020
Lights and Musicの2020年のお気に入りアルバム20選です。全世界が家の中に取り残されてしまったような、SF小説のシュールな世界観が現実になってしまった今年でしたが、音楽はいつでもそばにいて、気持ちを鼓舞してくれたり、励ましてくれたり、慰めてくれたり、クリエイティブな気分にさせてくれたり、現実を忘れさせてくれたりしました。ダンスミュージックはよりグルーヴィーに、アンビエントミュージックはより内省を深め、ディスコミュージックは再び顔を出し、フォークミュージックはその言葉に鋭さを増しました。それではリストをご覧ください。
20. Westerman, “Your Hero’s Not Dead”
Talk Talkとも比較される静謐で、色彩豊かなソングライティングが味わえるシンセポップアルバム。
19. Bing & Ruth, “Species”
パイプオルガンを軸とした、うちに篭るためのアンビエントアルバム。
18. Taylor Swift, “Folkore”
ステイホームだから完成しえた、テイラー・スイフト式フォークアルバム。
17. Jake Muirs, “the hum of your veiled voice”
フィールドレコーディングを操作して作り上げた美しいサウンドコラージュ。ベルリンで拾われた音で作られている。
16. The Microphones, “The Microphones in 2020”
Mount EerieのPhil Elverumによるプロジェクト。繊細な音と言葉で紡がれる1トラック45分の2020年。
15. Shinichi Atobe, “Yes”
チルとヒートを巡り巡る、今年一番のハウスミュージック。
14. Sparkle Division, “To Feel Embraced”
LAに引っ越したWilliam Basinskiが手掛けた、スムースジャズの再解釈作品。ジャケットも最高。
13. Demae, “Life Works Out…Usually”
ロンドン出身のソングライターによる「Black Joyを祝福する」傑作R&Bアルバム。
12. Yves Tumor, “Heaven to a Tortured Mind”
エクスペリメンタルアーティストによるグラムでセクシーなロック絵巻。
11. Perfume Genius, “Set My Heart on Fire Immediately”
偉大なアメリカの作家たちのストーリーテリングをクィアな視線で表現し、現代のマッチョイズムを問う力作。
10. Cuushe, “Waken”
フェミニズムムーブメントにインスパイアされた、京都出身のソングライターによる5年ぶりのフルアルバム。ドリームポップにUKガレージのビートメイキングを導入し、新たな境地に足を踏み入れた。
9. Adrianne Lenker, “Songs & Instruments”
Big Thiefのフロントパーソンによるフォークソングとインスト集。優れたソングライティングとソングライターの真摯な心情が胸に突き刺さる快作。
8. Fiona Apple, “Fetch the Bolt Cutters”
死んだ愛犬の骨を入れた箱、身近にあるものをパーカッションの道具に使ったフィオナ・アップルが5年かけてレコーディングした新作。ピアノやドラムを凶暴に叩きつけながら、「私をテーブルの下で蹴っても黙らない」など男女の不釣り合いをユーモラスな歌詞とともに吐露する。
7. Róisín Murphy, “Róisín Machine”
Dua Lipa、Kylie Minogue、Jessie Wareなど様々な女性アーティストがディスコに挑戦した2020年でしたが、クラブの雰囲気やフロアの熱気をおそらく一番理解している。このクラブミュージックのミューズ、ゲイアイコンに敵うものはいませんでした。オールナイトイベントを1時間に濃縮したような最高のダンスミュージック。
6. Kelly Lee Owens, “Inner Songs”
強烈なダンスチューンと穏やかなシンセポップが共存。アーティストの頭の中を覗き込むような深淵な音世界。John Caleとの共演も。
5. Julianna Barwick, “Healing is a Miracle”
自身の声を幾重にも重ねて独特のアンビエント世界を作り上げるJulianna BarwickがNinja Tunesからリリースした意欲作で、JonsiやNosaj Thingと共演。癒しの力を信じた直球タイトルも良い。
4. Kate NV, “Room for the Moon”
ロシアのエクスペリメンタル・アーティストが、日本のソングライターやソ連時代のアニメ音楽などにインスパイアされ作り上げた、新しいポップミュージック。キッチュな”Lu Na”や、サックスを大胆に取り入れた”Plans”、アニメのエンディングのような”Telefon”など、どこを切っても美味しい作品。
3. Mary Lattimore, “Silver Ladders”
LAのハープ奏者による新作はSlowdiveのギタリストNeil Halsteadがプロデューサーとして参加。Slowdiveの”Pygmalion”のような、スペーシーなアンビエント世界が支配する内省のための音楽。
2. Jessie Ware, “What’s Your Pleasure?”
UKのシンガーソングライター、Jessie Wareが「とにかく楽しいアルバムを」と、肩の力を抜いて作ったダンス・ポップアルバムオブザイヤー。愛の喜びを高らかなディスコミュージックに昇華させた最終トラック”Remember Where We Are”や、80年代のディーバとリンクする”Save A Kiss”、ドラマチックなストリングスが映画音楽のような興奮をリスナーに与える”The Kill”など、彼女にしかできない、とにかく洗練されたポップミュージックです。
1. Blake Mills, “Mutable Set”
ギタリストとしてBob DylanやFiona Appleとの共演、プロデューサーとしてAlabama ShakesやPerfume Geniusのアルバムを手掛けるなど、各所から引っ張りだこの、Blake Mills。彼が今年リリースした『Mutable Set』はひとつひとつの音が研ぎ澄まされ、そこにあるべきものとして鳴り響いています。隣で弾き語られているような親密感と、どこまでも広がる残響音。2020年の閉塞した空気にそっと寄り添い、心の平穏を保ち続けさせてくれたのがこのアルバムでした。”Money is the One True God”のシニカルなソングライティングに、不協和音が突然訪れる”Summer All Over”、ギターが美しく反響する”Vanishing Twin”の小宇宙的世界観など、所々に散りばめられた、心地良い引っ掛かり。残酷な2020年を振り返るとき、このアルバムの繊細で勇敢なサウンドをきっと一番最初に思い出すと思います。