90年代後半にダラスの自主制作テレビ局が生んだローファイR&Bを5曲厳選
By Sebastian Jobst
音楽好きの友達に、最近どこで音楽を聴くか尋ねると、NTSの名がよくあがる。NTS は ”Nuts to Soup” の略称で、音楽オタクのハングリーなリスたちを夢中にさせる、ナッツ(クレイジー)な曲が揃っている。完璧な名前だ。
先週 NTS の “Image Search” という番組を聞いた。私のような90年代を生きたゲイのティーンエージャーにとって、R&Bはうまく消化しきれない感情の行き先となった。そこで流れたジャネット・ジャクソンのデモをきっかけに、この番組のアーカイブを漁ってみると、2017年に放送された「 Dallas Vernacular R&B Special 」にたどり着いた。この特番では、90年代後半、ダラスのパブリック・アクセス・テレビジョン(視聴者の自主制作テレビ局)で放送された Positive Profiles という音楽番組の曲を流していた。
Positive Profiles のクリエイターは D. Alfred Jones。番組で紹介されるミュージックビデオは、Jones 自身がプロデュースから音楽ビデオの撮影、監督まで全て担当している。新進気鋭のアーティストによるものから、彼自身の楽曲までが放送された。David AJJという名前で、Apple MusicやSpotify、YouTube で現在アーカイブが公開されているので、ぜひチェックしてみて欲しい。しかし!Positive Profiles に登場したほとんどのアーティストの近況は、インターネットで確認することができなかった。謎が深まる。
インターネットが目覚める前の、地元だけのYouTubeのようなテレビ局、パプリック・アクセス・テレビジョン。その魅力は、低予算ながらも、地元のアーティストが持つ幅広くワイルドな才能にスポットライトを当てたことだろう。YouTubeをブラウズすると、当時の地元CMや宅録ミュージシャンの動画を見つけることができる。確かに笑えるし、意地悪なユーザーがコメント欄で馬鹿にしたりしているけれど、ローファイながらも何かを作ろうとする彼らの姿勢は賞賛に値する。大抵の場合、大衆を喜ばせるための方式に従ってオーバープロデュースされた動画よりもチャーミングだ。
ダラスのクリエイターがパブリック・アクセス・テレビジョンの力を借りて地元のコミュニティに貢献した Positive Profiles。そこで放送された特筆すべき作品を5つ選んでみた。
1. D. Alfred Jones . N.M.J. (New Millenium Jazz)
番組のクリエイターによる、ヒップホップとジャズの平和的でリラックスしたチューン。割れた卵のオブジェの前でキーボードを弾いたり、車の前でフルートを奏でを奏でながらバイブスを感じるJonesなど最高のシーンが満載。
2. K-Li Hooks - Let*s Talk About It
アップビートでキャッチーなチューン。ファッションにも注目してほしい。白いトラックスーツのセットアップや幅の広いレザージャケットとバケツ型の帽子、肩を片方出したドレスに赤に染まったサングラス。Z世代も夢中になるファッションが満載だ。
3. Fonksta’ - My Reality (Of Life)
90年代で最も素晴らしいと思うのが、ハードとソフトなテクスチャーの融合だ。例えばMehod ManとコラボしたMary J. BligeやBusta Rhymesと共演したジャネット・ジャクソン。今曲もそのトレンドに従っている。よくある街の風景でなく、動く電車を背景に使っているのもよくある音楽ビデオとは一線を画している。
4. Lady T.J. - That’s What Love Is
スポークンワードで魅了する Lady T.J. は一本のバラを手に、優しく自らを抱擁する。彼女のセクシーな歌声は恋人を安心させ、お互いの気持ちを確かめ合う。お互いの愛の営みに官能を注ぎ込んでいるのだ。
5. Shelley Johnson Feat. David A.J.J. - Sign Your Name
私が特に気に入っているのがこの曲だ。乾いた歌声を強烈なエフェクトに絡ませ、人の心を掴む空間を作り上げている。Tirzahのような現代アーティストが頭に浮かんだ。シリアスな曲の途中で、突然笑顔を見せられると、私はもう夢中になるしかない(この後、すぐに冷静になるのだが)。本物のスターだ。
私たちは一度の検索ですぐに結果にアクセスできる。だが、時には結果は向こうからやってくることがあるし、その過程を信じるということが大事だ。Positive Profiles のようなタイムカプセルは、それが作られた地域から外へ出ることがほとんどないだろう。皆さんもこの番組の存在を友人に共有してくれたら嬉しい。
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